【簡単】特区民泊とは旅館業法の除外特例!6つの特徴と認定地域一覧・設備要件を解説

「特区民泊は一般的な民泊は何が違うの?」
「特区民泊を運営できる地域を知りたい」
「民泊の規制は、特区民泊であれば緩和されるのかな?」

特区民泊は、民泊新法の年間営業日数の上限が緩和されるなど様々なメリットのある民泊の運営形態です。しかし、特区民泊で営業できる地域や設備要件が詳しくわからないという方は多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、特区民泊について以下の内容を解説します。

  • 特区民泊認定地域・実施可能エリア一覧
  • 特区民泊の6つの特徴【民泊関連法と比較】
  • 特区民泊の申請の流れ

特区民泊で営業できる地域や認可を受ける方法が理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。

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目次

特区民泊とは国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の除外特例

特区民泊とは国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の除外特例

特区民泊とは国家戦略特別区域法による、旅館業法の除外特例を受けた営業形態です。都道府県の認定を受けることで、旅館業法の適用から除外され、一般住宅を用いた宿泊サービスの提供ができます。

国家戦略特別区域法は、国が国家戦略特区として指定した自治体において、規制改革を行い、産業の国際競争力を高めることを目的とした法律です。特区民泊は、数ある規制改革メニューの1つで、正式名称を「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」と言います。

特区民泊認定地域・実施可能エリア一覧

特区民泊認定地域・実施可能エリア一覧

特区民泊は、国家戦略特区に認定されている地域すべてで営業できるわけではありません。
営業可能地域は「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」として認定されている自治体の定められたエリアに限定されています。現在、国家戦略特区において特区民泊が認定されている地域は以下の8地域です。

自治体名
(施設数)
実施可能エリア
千葉県千葉市
(1施設)
実施可能エリアマップ】若葉区及び緑区内の市街化調整区域、第一種・第二種低層住居専用地域・第二種中高層樹居専用地域
東京都大田区
(103施設)
実施可能エリアマップ】第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、第一種住居地域(3,000平方メートル以下)
新潟県新潟市
(2施設)
実施可能エリアマップ】市街化調整区域
大阪府
(10施設)
実施可能エリアマップ
・市街化区域のうち工業専用地域を除く全地域で実施

(守口市、泉佐野市、松原市、大東市、柏原市、能勢町、忠岡町)

・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、第一種住居地域(3,000平方メートル以下)

(岸和田市、池田市、泉大津市、貝塚市、茨木市、富田林市、河内長野市、和泉市、箕面市、羽曳野市、門真市、摂津市、高石市、藤井寺市、泉南市、四條畷市、大阪狭山市、阪南市、島本町、豊能町、熊取町、田尻町、岬町、太子町、河南町、千早赤阪村)

大阪府大阪市
(3,178施設)
実施可能エリアマップ】第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、第一種住居地域(3,000平方メートル以下)
大阪府寝屋川市
(2施設)
実施可能エリアマップ】第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、第一種住居地域(3,000平方メートル以下)
大阪府八尾市
(1施設)
実施可能エリアマップ】第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、第一種住居地域(3,000平方メートル以下)
福岡県北九州市
(2施設)
実施可能エリアマップ】第一種・第二種低層住居専用地域、市街化調整区域

参照元:特区民泊の動き 実績(令和5年1月31日時点)

特区民泊は東京都大田区で平成28年1月に初めて認定され、令和5年1月31日時点で9地域3,301施設が運営されています。

特区民泊の特徴6選【民泊関連法と比較】

特区民泊の特徴【民泊関連法と比較】

民泊営業に関する法律は特区民泊だけでなく、旅館業法の簡易宿所営業、民泊新法(住宅宿泊事業法)の3つがあります。こちらでは、他の2つの法律と比較して特区民泊の特徴について解説します。3法の特徴の一覧は、以下の表を確認してみてください。

国家戦略特別区域法
(特区民泊)
旅館業法
(簡易宿所)
民泊新法
許認可 認定 許可 届出
年間営業日数 制限なし 制限無し 180日以内
宿泊日数の下限 2泊3日 制限なし 制限なし
フロント設置義務 不要 不要(条例により義務付けられているケースがある) 不要
客室面積 一居室25㎡以上 33㎡以上(10名未満の場合は人数×3.3m2以上) 3.3㎡/人
衛生措置 換気、採光、証明、防湿、清潔などの措置 換気、採光、証明、防湿、清潔などの措置 定期的な清掃
消防設備 必要 必要 必要(家主居住型の場合緩和措置あり)
近隣住民への説明・苦情対応 必要 不要 必要
不在時の管理委託 不要 不要 必要

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 許認可

民泊営業の許認可の方法は、3つの法律で以下のとおり異なります。

  • 国家戦略特別区域法:認定
  • 旅館業法:許可
  • 民泊新法:届出

許認可を受ける難易度は、旅館業法の「許可」が最も難しく、民泊新法の「届出」が最も易しいと言えます。国家戦略特区の「認定」は2つの法律の中間の難易度です。特区民泊の「認定」は、制度に基づいた営業ができる施設・体制であることを所轄庁が認めるという意味合いです。

旅館業は、本来禁止されている行為を「許可」するという考え方であるため、申請内容のチェックはより厳格に行われます。一方、民泊新法は、営業を始める事実を所轄庁に知らせる意味合いの「届出」であるため、書類に不備がなければ申請は受理されます。ただし、どのような方法であっても適切な手続きをしなければならないことに変わりはありません。

2. 年間営業日数

民泊の年間営業日数の規制は、民泊新法のみ「180日を超えない範囲」とされています。民泊新法では住宅地での営業が認められているため、周辺住民への影響を考慮して、営業日数に制限が設けられています。

年間営業日数の制限は、民泊営業において大きなデメリットです。宿泊サービスとして通年営業をする場合には、特区民泊または旅館業法の簡易宿所として営業する必要があります。

民泊新法の180日ルールについて詳しく知りたい方は、関連記事「【解決】民泊新法180日ルールのポイント3選!利益を上げる方法を解説」をあわせてご確認ください。

3. 宿泊日数の下限

宿泊日数の下限は、特区民泊のみ「2泊3日以上」という規制が設けられています。特区民泊で営業する場合、1泊2日での宿泊予約は受け付けられません。特区民泊は外国人旅行客の長期滞在によって、地域に経済的な効果をもたらすことが目的です。短期旅行や出張の宿泊客をターゲットとした宿泊サービスには適していません。

4. 消防設備

消防設備は、いずれの法律であっても火災報知設備や誘導灯などの消防設備が必要です。ただし民泊新法の場合、家主が居住している住宅を活用した営業の場合、消防設備の緩和措置があります。特区民泊では、家主居住型の場合であっても消防設備の緩和措置はありません。家主居住型の民泊を行う場合は、民泊新法での申請が適しています。

民泊の消防設備について詳しく知りたい方は、関連記事「【保存版】民泊の消防法上必要な設備を建物種類別に紹介【費用や手続きを解説】」をあわせてご確認ください。

5. 近隣住民への説明・苦情対応

民泊施設の近隣住民への説明や苦情対応体制の整備は、旅館業法を除き必要です。特区民泊の場合は、自治体によって定められた範囲の住民への説明、苦情に対応できる体制の整備が求められます。民泊新法では特区民泊よりも厳しく、宿泊者に対してチェックイン時に利用上の注意を行うことや、集合住宅を利用する場合には管理規約で許可されている証拠書類の提出が必要です。

民泊のトラブルについて詳しく知りたい方は、関連記事「【これで解決】民泊のトラブル事例5選と3つの対策【相談先も3つ紹介】」をあわせてご確認ください。

6. 不在時の管理委託

家主が常駐していない不在型民泊の場合、民泊新法では管理業者への管理業務委託が義務付けられています。管理業務委託は、清掃費用を含めると売上の50%程度の費用が必要です。特区民泊では、管理業務委託に関する定めはありません。自身で緊急時対応や清掃が困難な場合は、管理業務委託を検討してみると良いでしょう。

住宅宿泊管理業者への委託について詳しく知りたい方は、関連記事「【完全版】住宅宿泊管理業者に委託できる6つの業務!費用相場や手続きを解説」をあわせてご確認ください。

特区民泊の4つの設備要件

特区民泊の設備要件

特区民泊を始めるにあたって必要な設備要件は主に以下の4つです。

  1. 消防設備
  2. 居室
  3. 洗面設備等
  4. 外国語を用いた各種情報の掲示

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 消防設備

特区民泊の施設は、消防法上の防火対象物「旅館、ホテル、宿泊所」に該当します。以下の消防設備を設置した上で、消防署に「消防法令適合通知書」の申請をする必要があります。

設備 内容
消火器 台所に設置(延床面積が150㎡以上の場合は居室や廊下などにも設置が必要)
火災報知設備 自動火災報知設備(特定小規模施設用自動火災報知設備での代用が認められる場合がある)
誘導灯 出入り口や通路に設置
その他 カーテン、じゅうたん等は防炎物品を使用、宿泊室に避難経路図を掲出

延べ床面積が300㎡未満の施設の場合、自動火災報知設備は「特定小規模施設用自動火災報知設備」での代用が認められています。「特定小規模施設用自動火災報知設備」は、電気配線工事が不要であるため、設置工事費用を大きく削減できます。

民泊の消防設備について詳しく知りたい方は、関連記事「【保存版】民泊の消防法上必要な設備を建物種類別に紹介【費用や手続きを解説】」をあわせてご確認ください。

2. 居室

特区民泊の施設には、以下の条件を満たした居室が必要です。

  • 1居室の床面積が25㎡以上であること
  • 出入口と窓は鍵をかけることができるものであること
  • 出入口と窓を除き、居室と他の居室、廊下等との境は壁造りであること
  • 適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有すること
  • 寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備及び清掃のために必要な器具を有すること

民泊新法の場合は居室の仕切りが「ふすま」であっても問題ありませんが、特区民泊では壁造りでなければなりません。

3. 洗面設備等

特区民泊の水回り設備は、以下の4つが必要です。

  • 台所
  • 浴室
  • 便所
  • 洗面設備

各設備の設置個数は、施設の定員に合わせて適切な数とされています。必要な個数は、保健所に確認しましょう。

4. 外国語を用いた各種情報の掲示

特区民泊は外国人旅行客が多く利用することを想定しているため、以下の事項に関して外国語での掲示が必要です。

  • 施設の使用方法
  • 緊急時における連絡先

外国人は日本の施設に慣れていないため、トイレや浴室の利用の仕方など丁寧な説明の掲示が求められます。また、深夜の騒音防止など周辺住民への影響に配慮した説明も必要です。

特区民泊申請の流れ5ステップ

特区民泊申請の流れ

特区民泊の営業を始めるには、都道府県の認定が必要です。こちらでは、特区民泊申請の流れを以下の5つのステップで解説します。

  1. 保健所・消防署への事前相談
  2. 必要設備や運営体制の整備
  3. 近隣住民への説明
  4. 認定申請
  5. 施設検査

一つひとつ見ていきましょう。

1. 保健所・消防署への事前相談

申請手続きの準備を始める前に、保健所と消防署で必要な設備や書類の確認を行います。また、建築基準法に基づいた建物の確認のために建築課への相談が必要な場合もあります。設備の設置場所等の確認を行うため、相談に行く際には住宅の立面図や平面図の準備が必要です。事前相談で準備が必要な設備、書類をすべて確認しておきましょう。

2. 必要設備や運営体制の整備

保健所や消防署の指導に基づき、必要な設備の設置工事を行います。誘導灯の設置など電気配線作業が必要な工事は、専門の業者への依頼が必要です。また、工事と合わせて運営体制の整備も進めます。管理業務を委託する場合は、認定申請書類を提出する前に契約手続きを完了させておきましょう。

3. 近隣住民への説明

民泊営業を始めることを施設の近隣住民に説明します。説明が必要な住民の範囲や実施の方法は、自治体によって規定があるため事前相談の際に確認しておきましょう。近隣住民への説明は、営業を始めてからトラブルが起こらないよう確実に行うことが求められます。

4. 認定申請

民泊営業の準備が整ったら、認定申請に必要な書類一式を保健所に提出します。申請の際には、手数料を収入証紙で支払う必要があります。手数料の金額は、自治体に確認しましょう。

5. 施設検査

認定申請書類を提出すると、設備の確認のため保健所と消防署による施設の立入検査が行われます。立入検査には、事業主の立ち合いが必要です。設備だけでなく運営体制についても確認が行われます。施設検査で問題がなければ、後日認定された旨の通知が届きます。

特区民泊の活用の際には施設の立地や設備を確認しましょう

特区民泊の活用の際には施設の立地や設備を確認しましょう

特区民泊に基づいた民泊を行う場合は、まず自身の施設の立地が該当するのか確認しましょう。特区民泊は、国家戦略特別区域法の認定地域すべてで行えるわけではありません。国家戦略特別区域法の認定地域であっても「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」に認定されている必要があります。

特区民泊は民泊新法と異なり、年間の営業日数に制限がないことが大きな特徴です。また、旅館業法の簡易宿所営業に比べて申請手続きが簡易である点もメリットと言えます。自身の民泊施設が特区民泊の該当地域に所在しているなら、認定申請を検討してみてはいかがでしょうか。

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