【保存版】民泊の消防法上必要な設備を建物種類別に紹介【費用や手続きを解説】

民泊の消防法上必要な設備を建物種類別に紹介

「消防署に相談に行く前に、民泊に必要な設備を確認したい」
「消火器にも色々な種類があってどれを選べば良いかわからない」
「民泊の消防設備にはどのくらいの費用がかかるのかな?」

民泊運営を始めるにあたって、消防設備は必須です。しかし自身の民泊物件にどのような消防設備が必要なのか、不安を抱えている方は多いでしょう。また物件によっては高額の工事費が必要な場合があるため、これから建物を探す方にとっても消防設備の知識は必要です。

そこでこの記事では、民泊の消防設備について以下の内容を解説します。

  • 施設種類別の消防法に基づく民泊の必要設備
  • 民泊に必要な消防設備・費用
  • 民泊の「消防法令適合通知書」取得手続き

消防署に相談に行く前の基礎的な知識が理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。

目次

民泊運営には消防法に遵守した設備が必要

民泊運営には消防法に遵守した設備が必要

民泊の営業を始める際には、都道府県に「消防法令適合通知書」を提出する必要があります。消防法令適合通知書の取得には、消防法17条に基づいた設備を設置し、消防署の検査を受けなければなりません。民泊施設は消防法上の以下の3つの「防火対象物」に分類され、それぞれ必要な消防設備が異なります。

  • 一般住宅
  • 宿泊施設
  • 共同住宅
  • 複合用途防火対象物

また民泊に必要な消防設備は、都道府県等の条例で追加で規定されている場合があるため、自治体や管轄の消防署に確認する必要があります。

参照元:防火対象物の用途区分表(消防法施行令別表第一)

【建物種類別】消防法に基づく民泊の必要設備

【建物種類別】消防法に基づく民泊の必要設備

こちらでは、以下の4つの建物の種類別に必要な消防設備を解説します。

  • 一戸建て(家主不在型)
  • 長屋(家主不在型)
  • アパート・マンション(家主不在型)
  • 家主居住型の民泊施設(50㎡を超えない宿泊室)

それぞれの消防設備の設置場所については「民泊消防関係Q&A(東京消防庁)」または「民泊における消防用設備の設置について(消防庁)」を確認してみてください。

1. 一戸建て(家主不在型)

管理者が常駐していない家主不在型の民泊施設は、消防法上の「宿泊施設」に位置づけられます。一戸建ての民泊施設の場合、以下の消防設備が必要です。

設備

内容

消火器 台所に設置(延床面積が150㎡以上の場合は居室や廊下などにも設置が必要)
火災報知設備 特定小規模施設用自動火災報知設備の設置(自動火災報知設備の設置が必要な場合がある)
誘導灯 出入り口や通路に設置
その他 カーテン、じゅうたん等は防炎物品を使用、宿泊室に避難経路図を掲出

「3階建て」または「地下がある建物で屋内階段しかない」場合、火災報知設備は「特定小規模施設用自動火災報知設備」ではなく「自動火災報知設備」が必要です。「自動火災報知設備」は、配線工事などが必要なため設置には高額な費用がかかります。

一戸建てを使った民泊について詳しく知りたい方は、関連記事「【必見】一軒家民泊の許可を受ける方法を3つの法律別に解説【要件や申請書類を紹介】」をあわせてご確認ください。

2. 長屋(家主不在型)

長屋とは、1つの建物の中に複数の住戸がある住宅です。アパートやマンションとは、廊下やエントランスなどの共用部分がない点で異なります。また、玄関が2つある2世代住宅も長屋という扱いです。長屋は、以下の2つのケースで必要な消防設備が異なります。

  • 民泊に使用する部屋が多い場合:宿泊施設
  • 民泊に使用する部屋が少ない場合:一般住宅

「長屋全体で民泊に使用する部屋が多い場合」は、消防法上「宿泊施設」に該当します。例えば、長屋全体で3部屋ある内の2部屋を民泊に使用する施設の場合などが当てはまります。必要な消防設備は、以下のとおりです。

設備

内容

消火器 台所に設置(延床面積が150㎡以上の場合は居室や廊下などにも設置が必要)
火災報知設備 自動火災報知設備の設置(特定小規模施設用自動火災報知設備でも認められる場合がある)
誘導灯 出入り口や通路に設置
その他 カーテン、じゅうたん等は防炎物品を使用、宿泊室に避難経路図を掲出

一方で「長屋全体で民泊に使用する部屋が少ない」場合は、消防法上の「一般住宅」に該当します。必要な消防設備は、以下の3つのみです。

設備

内容

消火器 台所に設置
火災報知設備 住宅用火災警報器
その他 宿泊室に避難経路図を掲出

長屋は民泊に使用する部屋が多い場合は「宿泊施設」、少ない場合は「一般住宅」になると理解しておきましょう。

3. アパート・マンション(家主不在型)

家主不在型のアパート・マンションは、以下の2つのケースで必要な消防設備が異なります。

  • 9割以上の部屋を利用する場合:宿泊施設
  • 9割未満の部屋を利用する場合:複合用途防火対象物

「アパート・マンションの9割以上の部屋を利用する場合」は、消防法上の「宿泊施設」に該当します。必要な消防設備は、以下のとおりです。

消火器 台所に設置(延床面積が150㎡以上の場合は居室や廊下などにも設置が必要)
火災報知設備 自動火災報知設備(既存のもので構わない)
誘導灯 出入り口や通路に設置
その他 カーテン、じゅうたん等は防炎物品を使用、宿泊室に避難経路図を掲出

「アパート・マンションの9割未満の部屋を利用する場合」は、消防法上の「複合用途防火対象物」に位置づけられます。例えば、全体で10部屋ある内、1〜8室を民泊で利用する場合に該当します。この場合に必要な消防設備は、以下のとおりです。

設備

内容

誘導灯 出入り口や通路に設置
火災報知設備 自動火災報知設備(既存のもので構わない)
スプリンクラー 11階以上にある部屋を利用する場合
その他 カーテン、じゅうたん等は防炎物品を使用、宿泊室に避難経路図を掲出

アパート・マンションには通常「自動火災報知設備」が設置されているため、新たに工事を行う必要はありません。ただし、共同住宅特例によって「自動火災報知設備」がない場合は設置工事が必要なので、民泊を始める前に確認しておきましょう。

また、11階以上に民泊として使用する部屋がある場合は「スプリンクラー」の設置が必要です。スプリンクラーの設置工事には多額の費用が必要であるため、11階以上の物件を検討する際は注意しましょう。

マンションを使った民泊について詳しく知りたい方は、関連記事「【注意】マンション民泊は管理規約の確認が必要【必要手続きやトラブル対処方法を解説】」をあわせてご確認ください。

4. 家主居住型の民泊施設(50㎡を超えない宿泊室)

宿泊室の床面積が50㎡を超えない家主居住型の民泊は「一般住宅」扱いになります。必要な消防設備は、以下の3つです。

設備

内容

消火器 台所に設置
火災報知設備 住宅用火災警報器
その他 宿泊室に避難経路図を掲出

50㎡を超える場合は、家主居住型であっても「宿泊施設」と位置づけられます。50㎡とは、畳数でいうと30畳程度です。一般住宅扱いであれば誘導灯など特別な消防設備が不要なため、部屋数を制限するなど50㎡以内に収めれば、消防設備設置費用を大きく節約できるでしょう。

民泊に必要な5つの消防設備【費用も紹介】

民泊に必要な消防設備

民泊の消防設備は、種類や大きさなどに違いがあるため、どの製品を選べば良いか悩んでいる方は多いでしょう。こちらでは、民泊に必要な5つの消防設備を費用とあわせて紹介します。

  1. 消火器
  2. 特定小規模施設用自動火災報知設備
  3. 自動火災報知設備
  4. 住宅用火災警報器
  5. 誘導灯

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 消火器【4,000円~/個】

消火器は、ホームセンターなどで1個4,000円程度で購入できます。消火器には、薬剤や加圧方式などによって複数の種類があります。民泊で使用する場合、以下の条件の消火器を選ぶと良いでしょう。

  • 用途:業務用
  • 薬剤:粉末式
  • 火災種別:A・B・C対応
  • 加圧方式:強化液の蓄圧式

消火器には「家庭用」と「業務用」の用途別の種類があります。民泊施設では「業務用」が必要です。また薬剤は「粉末式」、加圧方式は「蓄圧式」の消火器を選びましょう。蓄圧式は安全性が高く、消火器の内部点検が5年免除されるメリットがあります。

2. 特定小規模施設用自動火災報知設備【1.5万円~/個】

自動火災報知設備とは、火災の熱や煙を検知した際に警報音と音声を発する機械です。民泊施設では、一戸建てやアパートなど多くの施設で「特定小規模施設用自動火災報知設備」の設置が認められています。

特定小規模施設用自動火災報知設備は、ホームセンターなどで1個1.5万円程度で購入できます。配線工事が不要であるため、電気工事士の資格がない方であっても設置が可能です。

3. 自動火災報知設備【40~50万円】

「3階建て」または「地下がある建物で屋内階段しかない」場合は「自動火災報知設備」が必要です。自動火災報知設備の設置には「感知器」や「音響装置」などを配線でつなぐ工事をしなければなりません。

配線工事には、消防設備士の資格が必要です。工事には40〜50万円程度かかるため、特定小規模施設用自動火災報知設備に比べて多くの費用がかかります。

4. 住宅用火災警報器【2,000円~/個】

住宅用火災警報器とは、一般住宅に設置する用の警報装置です。ホームセンターなどで、1個2,000円程度で購入できます。住宅用火災警報器は「連動式」を選びましょう。連動式とは1箇所で煙や熱を感知した場合に、複数の機械から警報を出す方式です。設置作業には、消防設備士等の資格は不要です。

5. 誘導灯【50,000円~/個】

誘導灯とは、屋外に出る扉や避難口に通じる通路に設置する照明器具です。誘導灯は非常口付近に「避難口誘導灯」、非常口までの通路に「通路誘導灯」の設置が必要です。

誘導灯は大きさによって「A級・B級・C級」の3種類があります。設置が必要な場所同士の間隔によって、以下のとおり大きさが指定されています。

  • 視認距離40~60m:A級
  • 視認距離30m:B級
  • 視認距離20m:C級

誘導灯はホームセンターやインターネットで購入できますが、100Vの電気を扱う配線工事が必要なため、電気工事士の資格を持った業者に設置を依頼する必要があります。工事費用は本体価格と工事費用を合わせて、1箇所50,000円程度です。

民泊の「消防法令適合通知書」取得手続き7ステップ

民泊の「消防法令適合通知書」取得手続き

こちらでは、消防法令適合通知書を取得するまでの手続きを紹介します。消防署に複数の書類を提出する必要があるため、手続きの流れを抑えておきましょう。

  1. 事前相談の準備を行う
  2. 消防署へ事前相談に行く
  3. 「工事整備対象設備等着工届出書」を提出する
  4. 「消防用設備等設置届出書」を提出する
  5. 「消防法令適合通知書」の交付申請をする
  6. 消防署の立入検査を受ける
  7. 「防火対象物使用開始届出書」を提出する

一つひとつ見ていきましょう。

1. 事前相談の準備を行う

必要な消防設備は、消防署への事前確認が必要です。消防署に相談に行く際に、以下の書類を準備しましょう。

  • 立面図
  • 平面図
  • 消防用設備の図面

立面図と平面図の作成は、建築士事務所や民泊代行サービス会社などに、10,000〜20,000円程度で依頼できます。平面図が準備できたら、消防設備を設置予定の場所を記載しましょう。

2. 消防署へ事前相談に行く

立面図などの書類を持って、民泊運営を行う住所を管轄する消防署に相談に行きましょう。消防署では、以下の点を確認します。

  • 消防用設備の設置位置
  • 「設置届出書」や「消防法令適合通知書交付申請」に必要な添付書類

確認漏れがあると、工事や手続きの際に手戻りが発生してしまうため、疑問点はすべて事前相談の際に確認しておきましょう。

3. 「工事整備対象設備等着工届出書」を提出する

必要な消防設備を確認したら、設置工事に移ります。着工前には「工事整備対象設備等着工届出書」を消防署に提出しなければなりません。様式は日本消防設備安全センターのホームページからダウンロードできます。

4. 「消防用設備等設置届出書」を提出する

消防設備の設置がすべて完了したら、4日以内に消防署に「消防用設備等設置届出書」の提出が必要です。

「消防用設備等設置届出書」の提出の際には、各設備の正常な作動を確認した「試験結果報告書」を添付する必要があります。それぞれの様式は、日本消防設備安全センターのホームページでダウンロードできます。

5. 「消防法令適合通知書」の交付申請をする

消防設備の設置が完了したら「消防法令適合通知書」の交付申請書を作成します。交付申請書の書式は消防署で受け取るか、自治体によってはホームページからダウンロードできます。

交付申請書の提出の際には、事前相談の際に持参した立面図や平面図などが必要です。そのほか、消防署の指示に従い必要書類を準備しましょう。

6. 消防署の立入検査を受ける

「消防法令適合通知書」の交付申請後、消防署で書類審査が行われます。書類の不備や書面上適切な消防設備が揃っていれば、消防署が建物の立入検査を行います。立入検査には、立ち会いが必要です。立入検査で問題がなければ、消防法適合通知書が交付されます。

7. 「防火対象物使用開始届出書」を提出する

「防火対象物使用開始届出書」とは、民泊施設の利用を始めることを消防署に連絡するための書類です。営業開始の7日前までに、消防署への提出が必要です。書式は消防署で受け取るか、自治体のホームページなどでダウンロードできます。

ご自身の民泊物件に必要な消防設備を確認しましょう

ご自身の民泊物件に必要な消防設備を確認しましょう

民泊の開業には、消防法に基づいた消防設備の設置が欠かせません。必要な設備は消防署に確認する必要がありますが、基本的な知識を頭に入れておくと準備がスムーズに進みます。

また、これから物件を選ぶ方は民泊の開業費用を抑えるために、物件別の必要な消防設備を理解しておくと良いでしょう。必要な設備は消防法で定められているだけでなく、自治体の条例で追加されている場合があるため、詳しくは消防署でご確認ください。

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