民泊とは住宅を活用した宿泊サービス!3つの法律と営業形態・始め方を解説

民泊とは住宅を活用した宿泊サービス!3つの法律と営業形態・始め方を解説

「民泊とゲストハウスは何が違うの?」
「民泊新法や旅館業法ってややこしくて違いがよくわからない」
「賃貸物件やマンションでも民泊ができるのか知りたい」

コロナ禍で一時的に落ち込んだ外国人観光需要の回復や空き家の活用などの事情を背景に、民泊事業に参入する方が増えています。民泊事業を始める第一歩として、まずは基礎知識の網羅的な理解が必要です。

そこでこの記事では、民泊初心者の方に向けて以下の内容を紹介します。

  • 民泊とゲストハウスの違い
  • 【法律別】3種類の民泊
  • 民泊のメリット・デメリット
  • 民泊の始め方

民泊が注目される背景から実際の始め方まで、これまで民泊を知らなかった方でも理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。

目次

民泊とは?注目される背景についても解説

民泊とは?注目される背景についても解説

ここでは、最も基本となる「民泊の定義」を含む以下2点を紹介します。

  1. 民泊とは
  2. 民泊が注目される背景

それでは見ていきましょう。

1. 民泊とは

国土交通省によると「民泊」についての法令上の明確な定義はありません。一般的には、戸建住宅や共同住宅など「住宅」の全部または一部を活用して宿泊サービスを提供することを指します。

また近年、空き家などを「短期で貸したい人」と「宿泊を希望する人」をインターネットを通じてマッチングするビジネス(Airbnbなど)が世界的に展開・増加中です。

参照元:民泊制度ポータルサイト

2. 民泊が注目される背景

民泊が注目される背景の1つは「訪日外国人観光客の増加」です。コロナ前の2019年までは訪日外国人旅行者数が右肩上がりで増加し、年間3,188万人が日本を訪れ最大値を記録しました。しかし、感染拡大防止策の一環として一部の例外を除いて国境をまたぐ往来が停止されたことで、2021年の訪日外国人観光客は25万人まで減少しています。日本政府観光局の統計発表によると、コロナ後の2023年11月時点での訪日外客数は、2019年同月と同じ水準まで回復中です。

国土交通省は、近時の訪日外国人旅行者の増加にともなう「宿泊施設の供給確保」に力を入れています。その中でも、多様な宿泊手段を提供できるよう、健全な民泊サービスの普及や旅館のインバウンド対応の促進などに取り組む方針です。

また「空き家の有効活用」の観点からも民泊は注目されています。総務省統計局が5年ごとに公表する「土地統計調査」によると、2018年の空き家数は846万戸でした。空き家は年々増え続けており、2018年までの30年間で457万戸(114.7%)増加しています。日本国内の人口減少の影響もあり、今後もさらに増加する空き家の有効活用が求められるでしょう。


参照元:観光庁 訪日外国人旅行者数
参照元:日本政府観光局JNTO 訪日外客数(2023年11月推計値)
参照元:国土交通省 宿泊施設の供給確保
参照元:平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計

民泊とゲストハウスの違い

民泊とゲストハウスの違い

民泊とゲストハウスに大きな違いはありません。ゲストハウスは単なる呼び名で、例えば民泊に「○○ゲストハウス」という施設名を付けることもできます。ゲストハウスには法律で定められた定義はないため、民泊よりも広い意味合いで使われることが多いです。一方でイメージの違いはあるため、一般的に知られている特徴をそれぞれ比較します。

「ゲストハウス」は複数人で自由に使えるキッチンやリビングなど、共用スペースがあるのが大きな特徴です。宿泊者同士の交流を深めることが前提となっているため、プライバシーの確保よりもオープンな空間が大切にされています。

一方「民泊」は個人が所有する住宅を貸し出すため、宿泊者同士の交流よりもホストとのつながりやその土地の文化に触れることが重視された宿泊サービスです。ただし、ホストの住まいが別の場所にある家主不在型の場合は「貸し別荘」に近い施設となります。

【法律別】民泊の3つの種類

【法律別】民泊の3つの種類

現在日本国内で「民泊」を行うには、以下3つの方法があります。

  1. 旅館業法の許可
  2. 特区民泊の認定
  3. 民泊新法の届出

同じ「民泊」でも法律が異なることで、特徴や規制内容が大きく変わってきます。一つひとつ確認していきましょう。

1. 旅館業法における民泊

1948年に施行された「旅館業法」に基づく民泊で、厚生労働省が所管しています。旅館業の種類には3つあり、民泊は「簡易宿所営業」に含まれます。簡易宿所とは「客室を多人数で共用する宿泊施設」を指し、いわゆるカプセルホテルや山小屋など1つの客室を複数人で共用できるのが特徴です。

旅館業法の民泊には営業日数の制限がなく、年間を通して宿泊サービスが提供できます。一方で、申請書類の内容が専門的であるため、行政書士に対して「旅館業の許可申請」を依頼する費用がかかります。また、法律で決められた火災対策やトイレの数など、細かな設備環境を整える費用も必要です。

2. 国家戦略特区法における民泊

2014年に公布された「国家戦略特区法」に基づく民泊で、内閣府・厚生労働省が所管しています。民泊運営を行う地域が国家戦略特区に該当している場合、都道府県知事の「特定認定」を受けることで旅館業法の適用が除外され、営業条件が緩和されるのが特徴です。

旅館業法の適用が除外されることで、本来は認められていない「住居専用地域」での営業も可能となります。ただし、宿泊者には最低2泊3日以上の連泊をしてもらう必要があるなど、オーナーが把握すべき一定の事項がある点には要注意です。

国家戦略特区は大田区や千葉市など、全国でもごく一部の地域に限定されています。国家戦略特区で民泊を行いたいと考えている場合は、事前にエリアを確認したうえで物件を探しましょう。

国家戦略特区法における民泊について詳しく知りたい方は、関連記事「【簡単】特区民泊とは旅館業法の除外特例!6つの特徴と認定地域一覧・設備要件を解説」をあわせてご確認ください。

3. 民泊新法(住宅宿泊事業法)における民泊

2018年に施行された「民泊新法(住宅宿泊事業法)」に基づく民泊で、国土交通省・厚生労働省・観光庁が所管しています。国土交通省が課題とする「旅館業の無許可営業」「地域住民等とのトラブル防止」などに対応し、健全な民泊サービスの普及を図るために成立しました。

民泊新法は「届出」のみで始められ、旅館業と比較し開業までのハードルが低いです。また「住居専用地域」でも営業できます。ただし、1年間に人を宿泊させられるのは180日までと日数制限があることや、自治体によって独自の条例を細かく定めている点は理解しておきましょう。

民泊の2つの営業形態

民泊の2つの営業形態

民泊新法(住宅宿泊事業法)における民泊には、以下2つの営業形態があります。

  1. 家主滞在型
  2. 家主不在型

どちらを選択するかによって「ゲストとの距離感」「管理業者への委託の必要性」など運営の仕方に差が出るため、その点を比較しながらお読みください。

1. 家主滞在型

「家主滞在型」とはホームステイ民泊を指し、ホスト自身が住んでいる住宅に人を宿泊させる形態です。自宅の空き部屋を活用するなど、大きな設備投資をせずに始められます。また運営方針によっては、食事を共にしたりゲストと深い交流ができたりするのも魅力です。

その反面、プライバシーやセキュリティ面での不安があります。また、家主滞在型でも5室を超える部屋数で運営する場合は「住宅宿泊管理業者」への委託が必要となり、その分のコストが発生します。

2. 家主不在型

「家主不在型」とは、ホストが住んでない空き家を民泊に利用する形態です。集合住宅の一室や、戸建住宅を一棟ごと提供するため、ゲスト・ホスト共にプライバシーが確保されます。また、運営代行の利用で全部または一部の業務を外部へ委託すれば、本業などがあって多忙な方でも営業が可能です。

一方で、自身が「住宅宿泊管理業者」にならない限り、専門業者に委託しなければならない点はおさえておきましょう。また、消防法で求められている消防設備要件が家主滞在型に比べて厳しいことや、空き家を活用するためベッドなどの大型家具への初期投資が必要で、稼働するまでに時間と費用がかかる傾向があります。

民泊新法について詳しく知りたい方は、関連記事「【これで解決】民泊運営の問題点5選!新法のポイントや向いてる物件の特徴を解説」をあわせてご確認ください。

民泊のメリット・デメリット

民泊のメリット・デメリット

ここでは民泊のメリットとデメリットを紹介します。自身が想定している事業に民泊がマッチするのか、ぜひ参考にしてみてください。

1. メリット

民泊を運営する主なメリットは、以下の3点です。

  • 空き家や空き部屋などの資産を有効活用できる
  • 個人で副業的に始められる
  • 売却や賃貸への切り替えができる

民泊は使用していない空き家や空き部屋があれば、大きな初期費用をかけずに事業を始められます。管理費や固定資産税だけが発生していた空き家も、民泊として活かせれば収入を得るための優良資産へと変化させられます。

また民泊は、個人が行う副業にもおすすめです。これまで宿泊ビジネスに携わるには、旅館業法に準じた申請を経て営業許可を得る必要でした。法律と金銭面でのハードルが高いため、個人では参入するのが難しいです。

しかし、民泊新法のおかげで行政手続きが簡単になり、個人でも民泊ビジネスに参入しやすくなりました。また、民泊事業を終了する際には、使っていた物件を売却・賃貸への切り替えが可能です。リノベーションを行うことで資産価値が上がるケースもあり、不動産投資としての側面もあります。

2. デメリット

民泊を運営する主なデメリットは、以下の3点です。

  • トラブル対応が負担になる
  • 民泊以外の使い方に制限がある
  • 賃貸物件やマンションは事前確認が必要

民泊の営業を開始すると、騒音やゴミの不法投棄など大小さまざまなトラブルが起きます。特に民泊で発生したゴミについては「事業系ゴミ」に分類されるため、注意が必要です。産業廃棄物処理業者に事業ゴミ収集に来てもらうか、自身で事業ゴミを業者へ持ち込むなどの対応が必要になります。

また、民泊施設は「民泊以外」の使い方で収益を上げることはできません。ただし、国土交通省は賃貸運営との組み合わせは認めています。例えば「長期的な出張者向け」「企業への期間限定貸し出し」など、1ヶ月以上の賃貸借契約を締結して運用する方法があります。

また「賃貸物件」で民泊を行う場合は又貸し(転貸借)に該当するため「賃貸借契約」の確認が必要です。賃貸借契約に、民泊や転貸借を禁止する条項が書かれているケースがあります。「分譲マンション」の場合も「管理規約」に民泊禁止の旨が記載されている場合は営業できません。

賃貸物件での民泊について詳しく知りたい方は、関連記事「【徹底解説】賃貸物件での民泊の始め方5ステップ!物件の探し方3選を紹介」をあわせてご確認ください。
マンションでの民泊について詳しく知りたい方は、関連記事「【注意】マンション民泊は管理規約の確認が必要【必要手続きやトラブル対処方法を解説】」をあわせてご確認ください。

民泊を始めるまでの手順

民泊を始めるまでの手順

ここでは、民泊の始め方を以下3つの手順に分けて解説します。

  1. 物件の準備
  2. 行政などの手続き
  3. 集客

それでは見ていきましょう。

1. 物件の準備

民泊新法における民泊は、戸建住宅や集合住宅の一室などを活用して運営します。もともと所有している空き家などを使うケースを除き、民泊運営ができる物件の用意が必要です。民泊ができる物件は、例えば以下の方法で探します。

  • 民泊専用ポータルサイト
  • 民泊運営代行業者からの情報
  • 地域の不動産会社
  • 全国版空き家・空き地バンク

物件を探す際は、土地の使い道を表す「用途地域」に注意してください。民泊新法の民泊は「住居専用地域」での営業が可能ですが、旅館業法の民泊はできません。また、もし物件をリノベーションしてから始める際は、建物面積が増えるなど工事の内容によって、建築確認が必要になるケースもあります。そのほかに、以下の準備も行うようにしましょう。

  • 大型家具やインテリア用品の設置
  • 寝具・アメニティ類の用意
  • ハウスルールブックの作成

寝具やタオルは自身で洗濯することもできますが、リネンサプライを利用すれば使用済みのものを回収・洗浄してもらえます。

2. 行政などの手続き

民泊新法の民泊は、住宅が所在する都道府県庁の担当課に届出を行います。届出に際して、各自治体が指定した書類の用意が必要です。そのうちの1つに「消防法令適合通知書」など消防法に関連するものがあり、地域の消防署による現地確認が必要になる場合があります。消防署の現地調査が終了し必要書類がもらえれば、各都道府県庁への届出が可能です。

旅館業の場合、施設所在地を管轄している保健所が受付窓口です。現地チェックが厳しく入るため、スムーズな手続きのため早めに担当者に相談しましょう。また、旅館業法における民泊は設備要件が厳しいため、行政書士など専門家の協力を仰ぎながら準備を進めるのが一般的です。

3. 集客

物件の準備と行政上の手続きを終えたら「集客サイト」への掲載を行います。宿の写真が必要になるため、自身で撮ることに慣れていない方は、プロのカメラマンに依頼するのがおすすめです。

集客は、Airbnbや楽天Vacation STAYなどOTAと呼ばれる「オンライントラベルエージェント」経由で行うのが一般的です。手数料が発生するため、慣れてきたら自社ホームページからの集客へ切り替える方法もあります。

民泊の始め方については、関連記事「【完全版】民泊の始め方7ステップ!メリット7選・デメリット5選を解説」をあわせてご確認ください。

3種類の民泊を理解して準備を進めましょう

3種類の民泊を理解して準備を進めましょう

「民泊」とは一般的に、戸建住宅や共同住宅などの「住宅」の全部または一部を活用して宿泊サービスを提供することです。現在日本国内で「民泊」を行うには、法律別に3つの方法があります。

民泊は「空き家や空き部屋などの資産を有効活用できる」「個人で副業的に始められる」などのメリットがあります。一方で「民泊トラブル対応が負担になる」「民泊以外の使い方に制限がある」「賃貸物件やマンションは事前確認が必要」などデメリットの理解も必要です。

民泊は「訪日外国人観光客の増加」や「空き家活用」などの観点から注目を集めています。民泊への理解を深めて、ぜひ取り組み始めてみてはいかがでしょうか。

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