民泊ができる用途地域を3つの法律別に解説!調べ方と注意したい例外も紹介

民泊ができる用途地域を法律別に解説!調べ方と注意したい例外も紹介

「民泊が運営できない地域があるって本当?」
「民泊と用途地域ってどんな関係があるの?」
「用途地域を理解してから民泊開業の準備を始めたい」

民泊を行うには用途地域の理解が不可欠です。場合によっては確認不足が原因で「準備を進めていたけれど開業に至らなかった」ということにもなりかねません。円滑に民泊運営を行うために、しっかりと用途地域の理解を深めたいですよね。

そこでこの記事では以下の内容を解説します。

  • 用途地域とは何か
  • 民泊営業が可能な用途地域
  • 用途地域の調べ方

聞き慣れない用語で難しさを感じている方にもわかる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

用途地域とは土地の使い方のルール

用途地域とは、都市計画法で定められている「土地の使い方のルール」のことです。都市における土地利用は、大まかに以下の3種類に分類されます。

  • 住居系
  • 商業系
  • 工業系

種類が異なるこれらの土地利用が混ざっていると、個人の生活や企業の事業における利便性が悪くなり、景観的にも統一感がなくなります。そこで都市を以下の13種類に区分し、種類ごとに使い道を制限しているのです。用途の制限に加えて、建築物の建て方のルールも決まっています。

第一種低層住居専用地域
(低層住宅のための地域)
第二種低層住居専用地域
(主に低層住宅のための地域)
第一種中高層住居専用地域
(中高層住宅のための地域)
第二種中高層住居専用地域
(主に中高層住宅のための地域)
第一種住居地域
(住居の環境を守るための地域)
第二種住居地域
(主に住居の環境を守るための地域)
準住居地域
(道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域)
近隣商業地域
(まわりの住民が日用品の買物などをするための地域)
商業地域
(銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域)
準工業地域
(主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域)
工業地域
(どんな工場でも建てられる地域)
工業専用地域
(工場のための地域)
田園居住地域
※2019年4月~新導入
(農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域)
参照元:国土交通省 みんなで進めるまちづくりの話

また、用途地域は全国どの地域にも必ず設定されているわけではありません。例えば「都市計画区域外」や「用途地域無指定の地域」が該当し、これらの地域では用途地域を気にせず民泊運営が可能です。「都市計画区域」とは、都市計画法に基づき一体の都市として総合的に整備(開発や保全)するために都道府県が指定する区域です。そしてこの区域に含まれないエリアは「都市計画区域外」と呼ばれます。

【法律別】民泊営業が可能な用途地域

民泊は法律別に3種類あります。民泊営業ができる用途地域は「どの法律に基づいた民泊を行うか」によって変わるため、以下の3つの場合を比較しながら理解していきましょう。

  1. 旅館業法の場合
  2. 住宅宿泊事業法(民泊新法)の場合
  3. 特区民泊の場合

一つひとつ見ていきましょう。

1. 旅館業法の場合

旅館業法の民泊は、以下の用途地域で営業できます。

  • 第一種住居地域(3000㎡以下)
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域

13種類の用途地域のうち「住居専用地域」では営業できないのが大きな特徴です。旅館業には3種類あり、民泊はそのうち「簡易宿所営業」に当たります。簡易宿所とは、客室を多人数で共用する宿泊施設です。簡易宿所は、用途地域と建築物の関係性を表す以下の図のうち「ホテル・旅館」と同様の扱いで、6つの用途地域内でのみ営業が可能となります。

引用元:建築基準法別表第二の概要

この図は「建築基準法別表第二の概要」であり、用途地域ごとに建てられる建築物の制限が示されています。一目見てよくわかる内容のため、必要な方はこちらで全容を確認するようにしてください。

2. 住宅宿泊事業法(民泊新法)の場合

民泊新法の民泊は、以下の用途地域で営業できます。

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 田園住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域

旅館業法の民泊ができなかった4つの「住居専用地域」で営業可能な点が特徴です。民泊新法の民泊は「住宅」で行う必要があるため、住宅が建てられる用途地域内であればどこでも営業が可能です。住宅は一軒家のほか、共同住宅(マンション・アパート)も含まれます。

用途地域と建築物の関係性を表す以下の図のうち「住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿」の欄を参照すると、12種類の用途地域で営業可能なことがわかります。

引用元:建築基準法別表第二の概要

旅館業法の民泊と比較して、用途地域の制限が少ない点を理解しておきましょう。

3. 特区民泊の場合

特区民泊とは国家戦略特別区域法に基づき「旅館業法の特例が認められている地域」です。この地域では、旅館業法の民泊ができる用途地域に加えて「住居専用地域」での営業も可能です。ただし認定を行う自治体ごとに営業可能地域を制限している場合があるため、地域ごとに確認する必要があります。

2024年4月現在では、以下8つの地域が特区民泊の取り組みを行っています。

  • 東京都大田区
  • 千葉市
  • 新潟市
  • 北九州市
  • 大阪府
  • 大阪市
  • 八尾市
  • 寝屋川市

参照元:特区民泊の動き 実績 令和6年2月29日時点

上記の地域で民泊を検討している場合は、各自治体の正しい情報を得られるよう、直接問い合わせるようにしましょう。

特区民泊について詳しく知りたい方は、関連記事「【簡単】特区民泊とは旅館業法の除外特例!6つの特徴と認定地域一覧・設備要件を解説」を合わせてご確認ください。

【注意】民泊に関する用途地域の2つの例外

【注意】民泊に関する用途地域の2つの例外

用途地域だけで考えれば民泊が営業できる地域に該当していても、例外的に営業できないケースもあります。そこでここでは「用途地域の例外」ともいえる注意点を、以下2つ解説します。

  1. 特別用途地区
  2. 条例

それぞれ確認していきましょう。

1. 特別用途地区

特別用途地区とは、都市計画法において以下のように定義されています。

特別用途地区は、用途地域の指定の目的を基本とし、これを補完するため、特別の目的から特定の用途の利便の増進又は環境の保護等を図るため、建築基準法に基づき地区の特性や課題に応じて地方公共団体が定める条例で建築物の用途に係る規制の強化又は緩和を行うために定めるものである。

第12版 都市計画運用指針

上記の定義からもわかるように、特別用途地区は「13種類の用途地域に重ねて指定されるもの」です。用途地域の制限を強化・緩和する内容である点をおさえましょう。

例えば、通常の用途地域では民泊営業ができていたはずでも、特別用途地区に指定されていることで営業不可になる場合があります。反対に通常では営業できない用途地域でも、特別用途地区であれば営業が認められるケースがあります。

1998年に都市計画法が改正されるまでは「観光地区」「娯楽・レクリエーション地区」など特別用途地区は11種類と決まっていましたが、現在は種類や名称を地方公共団体が自由に設定できるようになりました。民泊運営を行う際は、計画しているエリアで特別用途地区に関する条例が出されているか確認しましょう。

2. 条例

条例とは、各自治体が独自に定めるいわば「地方版ルール」です。用途地域に重ねて民泊営業の可否やそのほかの細かな決まりごとを設けていることがあるため、条例を優先して確認する必要があります。

例えば東京都品川区では、月曜日の正午から土曜日の正午まで「近隣商業地域」と「商業地域」を除く区域の全域で事業の実施制限があります。これは区民の生活環境の悪化を防止するためとされています。

民泊の実施制限に関する地方公共団体の条例」は国交省の資料にまとめられているため、まずはこちらを確認しましょう。ただし公表時期が令和3年になっているため、最新情報は自治体へ直接問い合わせる方が安心です。

用途地域の3つの調べ方

用途地域の調べ方

ここでは、民泊を行いたいエリアの用途地域を調べる方法を3つ紹介します。

  1. 用途地域マップ
  2. 自治体が公開している都市計画図
  3. 自治体窓口への問い合わせ

どれも簡単な方法ですぐにできるため、ぜひ参考にしてみてください。

1. 用途地域マップ

用途地域マップ」とは、全国の市区町村ごとに用途地域を表示してくれるシステムです。シンプルなつくりで扱いやすいため、すぐに検索可能です。

調べ方はまず県を選択し次に自治体名を選ぶと、色分けされて用途地域が表示されます。自身がどの法律に基づいた民泊を行うかによって、営業の可否をチェックしていきます。注意点としては、選択する地域によっては情報が古い場合もあるため、いつの情報であるのかは表示される情報をチェックすると良いです。

2. 自治体が公開している都市計画図

自治体が独自で公表している、都市計画情報などの資料を参照する方法です。「○○市 都市計画情報」とネット検索して、該当する資料があれば参考にしましょう。

例えば神奈川県藤沢市では「ふじさわキュンマップ」として、市内の都市計画情報やまちづくり情報をわかりやすく一覧にしています。用途地域だけでなく自治体が管理する公園なども掲載されており、民泊を開始したあとの地域情報源にもなります。

3. 自治体窓口への問い合わせ

こちらは自治体の窓口へ電話や訪問をして、ダイレクトに確認する方法です。最新情報について直接担当者から話を聞けるため、安心感が得られます。「○○市 用途地域」とネット検索をして、担当課の連絡先や所在地などを確認して連絡しましょう。

民泊ができる物件の探し方について詳しく知りたい方は、関連記事「【保存版】民泊許可物件の探し方6選!認められる条件や委託会社についても解説」を合わせてご確認ください。

民泊の準備を行う前に用途地域を確認しましょう

民泊の準備を行う前に用途地域を確認しましょう

用途地域とは、都市計画法で定められている「土地の使い方のルール」です。民泊ができる用途地域は「どの法律に基づいた民泊なのか」によって変化します。そのため、自身がどの法律に則った民泊を行う予定なのかを、あらかじめ明確にしておく必要があります。

また、用途地域がわかっても、例外的により細かなルールが設定されている場合があるため注意が必要です。例えば「特別用途地区」や「条例」が該当します。民泊を行う際は用途地域だけでなくこの2点についても、合わせて調査するようにしましょう。

用途地域の調べ方には3つの方法があります。まずは「用途地域マップ」や自治体が公表している「都市計画情報」をネットで確認し概要をつかんだうえで、自治体の担当課に理解が正しいか直接確認できると安心です。民泊の準備を行う前に「用途地域と例外」をきちんと把握した上で次のステップへと進み、確実に開業に結びつけるようにしてください。

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