「使っていない期間だけ別荘を貸し出したい」
「貸別荘業を行うには、どんな許可が必要なのかな?」
「貸別荘の管理を委託すると利益が出るのか心配」
別荘は都会で暮らしながらも、週末や長期休暇を利用してスローライフを楽しめるため人気があります。しかし別荘を持つと、維持管理費の負担が不安という方は多いのではないでしょうか。別荘の維持管理費を捻出するためには、自身が利用していない期間「貸別荘」として貸し出す方法が一般的です。
貸別荘は数ヶ月から1年単位での賃貸が一般的ですが、民泊施設として1日単位で貸し出す方法もあります。民泊は自身の別荘利用と両立しやすいなど、様々なメリットがある事業形態です。そこでこの記事では、貸別荘業の民泊運営について、以下の内容を解説します。
- 貸別荘業の種類
- 貸別荘業で民泊運営をするメリット・デメリット
- 貸別荘業の民泊運営に必要な許可・費用
- 貸別荘業で民泊を始める手順
別荘を民泊施設として活用する方法が理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
貸別荘業の3つの種類を解説
貸別荘業は長期間の賃貸が一般的でしたが、1日単位で貸し出すケースも多く見られるようになりました。貸別荘業の事業形態は、主に以下の3つが挙げられます。
- 民泊
- 旅館
- 賃貸
民泊と旅館は、1日単位で別荘を貸し出す事業形態です。1日単位の貸出であるため、自身の別荘利用と調整がしやすい方法と言えます。民泊は「旅館業法(簡易宿所営業)」または「民泊新法(住宅宿泊事業法)」に基づいて運営します。民泊は多人数で居室を共用する形態であるため、一軒家の別荘であっても大規模な改修は不要です。
旅館は「旅館業法(旅館・ホテル営業)」の許可を受けて営業します。民泊との違いは、1人用の部屋だけでの営業が可能な点です。ただし、フロントを備えたロビーの設置や居室に鍵を付ける必要があるため、建物の改装が必要になります。
賃貸は、数ヶ月から1年単位で貸し出す事業形態です。管理の手間がかからなく、安定した収入を得られます。ただし、貸し出している期間は自身の別荘利用ができなくなることがデメリットです。当面は、自身で別荘を利用する予定がない方に適した事業形態と言えます。
貸別荘業で民泊運営をする3つのメリット
民泊として1日単位で別荘を貸し出す方法は、収益面などの様々なメリットがあります。こちらでは、貸別荘業で民泊運営をする3つのメリットを解説します。
- 自身が利用していない期間を使って収益を得られる
- 建物が劣化しにくくなる
- 賃貸よりも高利回りで運用できる可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 自身が利用していない期間を使って収益を得られる
別荘を民泊として貸し出すと、自身が利用していない期間に収入が得られます。別荘は、固定資産税や光熱水費の基本料金などの負担が必要です。
民泊施設としての稼働率が上がれば、維持管理コストを賄える可能性があります。自身の利用頻度が少ない場合は、民泊として活用するメリットは大きいでしょう。
2. 建物が劣化しにくくなる
民泊として活用した場合、人の出入りがあるため建物が劣化しにくくなります。人の出入りがない建物は、空気の入れ替えができないため、湿気が籠もり劣化のスピードが早くなります。
特に山間部にある別荘は、湿気が多いため建物の傷みは早いと考えておくべきでしょう。別荘の民泊としての利用は、建物を長持ちさせるという面でもメリットがあります。
3. 賃貸よりも高利回りで運用できる可能性がある
民泊は数ヶ月から1年単位の貸出に比べて、大きな収益が期待できます。一般的に、1ヶ月の賃貸料金に比べて、30日間の宿泊料金の方が高くなります。民泊施設としての稼働率が高ければ、賃貸よりも民泊の方が収益は高くなるでしょう。
貸別荘業で民泊運営をする4つの注意点
別荘の民泊としての活用には多くのメリットがありますが、注意点も理解しておく必要があります。こちらでは、貸別荘業で民泊運営をする4つの注意点を解説します。
- 民泊の許可手続きが煩雑
- 日常的な管理業務が必要
- 自身で別荘を利用しにくくなる
- 自治体の条例で民泊営業が規制されている場合がある
一つひとつ見ていきましょう。
1. 民泊の許可手続きが煩雑
別荘を民泊として利用する場合、宿泊事業を行うための許可手続きが必要です。民泊営業の許可を得るには、消防設備などの設置工事も行わなければなりません。
また、申請書類だけでなく建物の図面など添付書類が多いため、すべてを自身で作成するには多くの時間が必要です。煩雑な許可手続きを行う時間がない場合は、一括して請け負ってくれる代行業者を利用すると良いでしょう。
申請業務の代行について詳しく知りたい方は、関連記事「【完全版】行政書士に代行依頼できる3つの民泊申請業務!費用や手続きを解説」をあわせてご確認ください。
2. 日常的な管理業務が必要
民泊運営には管理業務が必要なため、日常的に作業時間を確保する必要があります。主な管理業務は、以下の4つです。
- 集客・受付業務
- 衛生管理業務
- 安全管理業務
- 宿泊者名簿の作成業務
宿泊者が快適に過ごせるように、適切な管理業務を行わなければ集客は見込めません。管理業務を自身で行えない場合は、管理代行業者を活用すると良いでしょう。管理代行業者には、宿泊客の受付から清掃まで一括して依頼できます。
3. 自身で別荘を利用しにくくなる
夏季の長期休暇など別荘需要が高い時期は、自身が利用したい期間と宿泊予約が重なりやすくなります。宿泊予約が入った場合は、自身の別荘利用を断念せざるを得ません。
ただし、民泊は数ヶ月から年単位の賃貸で貸し出す場合に比べれば、自身の別荘利用と調整しやすい事業形態です。
4. 自治体の条例で民泊営業が規制されている場合がある
別荘地では、条例で民泊の運営が禁止されている場合があります。例えば、長野県の軽井沢町では「不特定多数による利用や風紀を乱すおそれがある」ことから、町内全域で民泊運営を禁止しています。
また1ヶ月以上の賃貸での貸別荘は認めているものの、町内に責任者を置くなど条件を満たすことが必要です。民泊は自治体の条例によって、旅館業法や民泊新法を上回る「上乗せ規制」が設けられている場合が多いため注意が必要です。
貸別荘業の民泊運営に必要な許可は2種類
貸別荘業で民泊運営を行う際には「旅館業法(簡易宿所)」または「民泊新法(住宅宿泊事業法)」に基づいた許可を取る必要があります。2つの法律の違いは、以下の表のとおりです。
旅館業法 (簡易宿所) |
民泊新法 |
|
許認可 | 許可 | 届出 |
営業日数 | 制限無し | 180日以内/年 |
客室面積 | 33㎡以上(10名未満の場合は人数×3.3m2以上) | 3.3㎡/人 |
消防設備 | 必須 | 家主居住型の場合緩和措置あり |
不在時の管理委託 | 不要 | 必要 |
旅館業法に基づいて民泊を行う場合は、一般に「簡易宿所営業」の許可を取得します。簡易宿所とは、宿泊場所を多数人で共用する設備構造の施設を用いた営業です。
民泊新法は、一般住宅を用いた宿泊サービスを適正に運営するために制定された法律です。家主が建物に居住している施設の場合は、消防設備などの規制が大きく緩和されるなどの措置が取られています。自身が居住していない別荘の場合は、必要な設備は簡易宿所営業と大きく変わりません。
旅館業法と民泊新法の最も大きな違いは、営業日数の制限です。民泊新法では、営業日数が年間180日を超えない範囲と制限されています。民泊新法に基づいた許可を取る場合は、通年営業が難しいことを理解しておきましょう。
民泊新法と旅館業法について詳しく知りたい方は、関連記事「【徹底比較】民泊新法(住宅宿泊事業法)と旅館業法の違い7選!おすすめな人の特徴を紹介」をあわせてご確認ください。
貸別荘業の民泊に必要な費用【初期費用:50~100万円】
別荘で民泊運営を始める際には、初期費用として50〜100万円程度の準備が必要です。初期投資額の内訳は、以下の表を参考にしてみてください。
項目 |
費用 |
内容 |
申請代行費用 | 20~40万円 | 自治体への事前相談、書類作成、設備の手配など |
設備・リフォーム費用 | 30~50万円 | 消防設備、内装リフォーム、寝具など各種備品 |
申請代行費用には20〜40万円の費用がかかるため、初期投資額が膨らみます。初期投資を抑えたい場合は、申請手続きを自身で行うと良いでしょう。一方、消防設備や宿泊サービス提供に必要な備品は、費用を抑えることが困難です。
内装リフォームなどは、予算に応じて行うと良いでしょう。民泊運営を始める際には、ランニングコストについても理解しておくことが重要です。以下の表は、運営上必要なコストの内訳と費用の目安です。
項目 |
費用 |
内容 |
管理委託料金 | 売上の20%程度 | 予約受付、清掃手配、安全点検、緊急時対応など |
OTA利用料金 | 売上の15%程度 | オンラインでの宿泊予約サービス |
清掃料金 | 3千~1.2万円/回 | 清掃、洗濯、日用品の入れ替えなど |
火災保険料 | 2.5~5万円/年 | 損害補償、賠償責任補償 |
管理委託料金とOTA利用料金を合わせると、売上の約35〜40%程度になります。清掃料金は一般に、管理委託料金には含まれないため別途必要です。年間契約の火災保険料を除くと、ランニングコストは毎月の売上の50〜60%必要と理解しておくと良いでしょう。
民泊運営の費用について詳しく知りたい方は、関連記事「【保存版】民泊運営にかかる9つの費用!始め方を5ステップで解説」をあわせてご確認ください。
貸別荘業で民泊を行う際のポイント3選
別荘を使った民泊運営を行う際には、事前準備が大切です。こちらでは貸別荘業で民泊を行う際のポイントを3つ紹介します。
- 民泊の需要を確認する
- コンセプトを決める
- 予算規模にあったリフォームを行う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 民泊の需要を確認する
民泊運営を検討する際には、物件が立地する地域での宿泊需要の確認が必要です。需要調査では、以下の点を確認します。
- 観光客の来訪数
- 観光シーズン
- 競合宿泊施設の稼働率や価格
- 競合宿泊施設の設備
自身で調査ができない場合は、需要調査を担ってくれる民泊運営代行業者を活用すると良いでしょう。
2. コンセプトを決める
民泊の稼働率を上げるには、競合宿泊施設と差別化できるコンセプトを立てると良いでしょう。想定するターゲットの利用シーンを検討すると、どのようなポイントで差別化できるのかイメージできます。「眺望が良い」「リビングが広くパーティーができる」など、自身がお客さんになった気持ちでアピールできるポイントを探り、魅力的なコンセプトを考えてみましょう。
3. 予算規模にあったリフォームを行う
リフォームをする際には、費用が経営を圧迫しないように心がけましょう。貸別荘はリゾート目的での利用であるため、居室や設備に一定の質が求められます。ただし、過度なリフォームや設備投資は初期投資が大きくなりすぎるため注意が必要です。
リフォームは際限がなくなるため「リビングにはある程度の投資をするが、寝室はシンプルにする」など、メリハリのある予算の使い方をすることが大切です。
貸別荘業で民泊を始める手順4ステップ
民泊の準備を始める前に、許可申請の流れを理解しておきましょう。こちらでは、4つのステップで民泊を始める手順を解説します。
- 自治体に事前相談に行く
- 設備の設置
- 管理代行業者との契約
- 書類の作成と許可(届出)申請
一つひとつ見ていきましょう。
1. 自治体に事前相談に行く
まず別荘が立地する自治体の窓口に行き、民泊運営が可能な場所であるか確認しましょう。旅行業は都道府県の保健所、民泊新法は市町村役場が窓口です。事前相談の際には、申請に必要な書類や設備の確認も必要です。消防設備については、消防署に確認しましょう。
事前相談の際には、建物の立面図や平面図があるとスムーズに進みます。立面図や平面図は建築士事務所に作成を依頼する必要があります。事前相談や図面作成の手配が手間である場合は、申請代行業者に一括して依頼が可能です。
2. 設備の設置
事前相談で必要な設備を確認した後に、設置工事やリフォームを行います。電気配線が必要な工事は、電気工事士の資格を持った専門業者への依頼が必要です。
例えば、消防設備の「誘導灯」の設置には配線工事が伴います。必要な設備の設置が完了したら、保健所と消防署の立入り検査を行います。
3. 管理代行業者との契約
設備の設置と平行して、管理代行業者との契約手続きを進めます。民泊新法では、届出書類に管理代行業者名を掲載する必要があるためです。
管理代行業者は、国土交通省に登録された「住宅宿泊管理業者の一覧から選定します。住宅宿泊管理業者の一覧は、国土交通省のホームページから確認できます。
管理代行業者について詳しく知りたい方は、関連記事「【完全版】住宅宿泊管理業者に委託できる6つの業務!費用相場や手続きを解説」をあわせてご確認ください。
4. 書類の作成と許可(届出)申請
建物の整備と申請書類の作成が完了したら、自治体の窓口に書類を提出します。自治体からの営業許可は、申請から2週間程度かかります。許可が下りたら、消防署に「防火対象物使用開始届」を出して、すべての手続きは完了です。
貸別荘業を行うなら民泊運営がおすすめ
貸別荘業には、民泊運営がおすすめです。1日単位で貸し出す民泊であれば、自身の別荘利用と両立しやすく、稼働率が上がれば賃貸よりも利益を出せる可能性があります。
民泊運営を行う際には、法律や条例による規制やコストについて理解し、適切な設備や運営体制を整備しなければなりません。開業までの手続きや日常的な管理業務を行う時間がない方は、代行業者を利用しましょう。
代行業者への依頼にはコストがかかりますが、日常的に自身の手間がほとんどかからないため、無理なく民泊運営ができます。
コメント